症例概要
50代・女性
左足の外反母趾部分に、歩いたときの痛みがあり来院されました。
特に長時間歩いた日は症状が強くなり、夜になってから安静にしていても痛みを感じることがあるとのことでした。
足の状態を確認すると、外反母趾だけでなく、荷重した際に足が内側へ倒れ込む過回内傾向や、身体の重心が踵側に残りやすい後方重心がみられました。
また、過去に左足首を何度か捻挫しており、前距腓靭帯を損傷し、慢性足関節不安定症にもなっていました。
患者さんのお悩み
主なお悩みは、
- 左外反母趾部分の歩行時痛
- 長時間歩いた日の夜に出る安静時痛
- 歩くほど徐々に足がつらくなる
というものでした。
外反母趾の痛みというと、母趾の変形部分だけが注目されがちです。
しかし当院では、なぜ歩くことでその部分へ負担が集中しているのかを確認するため、足部の形だけでなく、足関節の安定性や重心位置、足趾の接地状態まで評価しました。
来院時の評価
今回の評価では、主に以下の特徴がみられました。
① 過回内足傾向
立った際に足部が内側へ倒れ込みやすく、土踏まずが潰れる方向へ負担がかかっていました。
回内が強くなると、歩行中に母趾周辺へ負担が集中する可能性があります。
② 後方重心
立位では重心が踵側へ残りやすく、足趾が床を捉えにくい状態でした。
足趾が十分に接地できないと、立位や歩行で足裏全体を使いにくくなります。
③ 足関節の動揺性
左足首には不安定さがみられました。
過去に前距腓靭帯を損傷するような捻挫を3回ほど経験しており、その影響が足関節の安定性に関係している可能性が考えられました。
なぜ症状が出ていると考えたのか
今回の症例では、単純に「外反母趾の変形があるから痛い」とは考えませんでした。
過去の捻挫によって足関節の安定性が低下すると、立ったときや歩いたときに足部を安定させにくくなることがあります。
その結果として足が内側へ倒れ込む過回内が強くなり、外反母趾部分に繰り返しストレスが加わっている可能性があると考えました。
さらに、後方重心によって足趾が床から浮きやすくなっていたため、本来足裏全体で分散したい負担をうまく分散できていなかった可能性もあります。
つまり今回重要だったのは、
「外反母趾の形」だけでなく、「足首が安定しているか」「足裏全体で身体を支えられているか」
という点でした。
実際に行った施術
初回は、まず足部を中心に調整しました。
特に、足部のアライメントや過回内の状態を確認しながら関節や周囲組織へアプローチしました。
また、足の内側を支える働きに関係する後脛骨筋にもアプローチを行いました。
後脛骨筋は、足のアーチや足部の安定性に関与する筋肉の一つです。
今回は、外反母趾部分だけを直接施術するのではなく、足全体が安定して荷重できる状態をつくることを目的に施術を行いました。
施術後・その後
初回施術後、患者さんからは、
「足の裏にアーチができた感じがする」
という感想がありました。
立位を確認すると、踵側へ偏っていた重心位置にも変化がみられ、施術前よりも足裏全体で身体を支えやすい状態になりました。
さらに、
「足の指が床についている感じがする」
という感覚も得られました。
その後、施術から日数が経過すると徐々に痛みが出てくるものの、初回来院時の痛みの強さまで完全に戻ることはなく、全体として徐々に改善傾向がみられています。
今後も、足部の安定性や重心位置を確認しながら経過をみていく予定です。
院長解説
外反母趾の痛みがある方の中には、過去の足首の捻挫が関係しているケースもあります。
捻挫は痛みや腫れが治まると「治った」と感じやすいのですが、その後も足関節の不安定さが残っている場合があります。
足首が不安定な状態で歩き続けると、身体は別の場所で安定性を補おうとします。
その一つとして、足が内側へ倒れ込む過回内が強くなり、結果的に外反母趾部分へ負担が集中している可能性があります。
また、今回のように踵重心で足趾が床を捉えられていない状態では、足本来の支持機能を十分に使えていないことも考えられます。
そのため当院では、外反母趾の角度や痛い場所だけを見るのではなく、
足首の安定性、足部のアライメント、重心位置、足趾の接地、歩行
まで含めて評価することを大切にしています。
同じ症状でお悩みの方へ
「外反母趾だから歩くと痛いのは仕方がない」
と思っている方でも、実際には変形部分以外に負担を増やしている要因が隠れていることがあります。
特に、
- 過去に足首の捻挫を繰り返している(痛みのない足首をぐにゃっとするものも含め)
- 土踏まずが潰れやすい
- 足の指が浮いている感じがする
- 長時間歩くと外反母趾が痛くなる
といった方は、外反母趾だけでなく足首から歩き方まで確認してみることも重要です。
なお、安静時にも強い痛みが続く場合や、赤み・腫れ・熱感などを伴う場合には、外反母趾以外の疾患を除外するため医療機関での検査が必要になることがあります。
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